【募集終了】きみに読む国立物語

「国立？」

「そう、国立。たっくんが生まれた街だよ。たくさん思い出があってね、話すと長くなるんだけど」

「たっくんが生まれた家は、国立駅から歩いて18分。18分だよ、そう、結構歩くよね。そう、昔はマンションに住んでいたんだよ」

「角部屋ってわかるかな？そう、角っこのお部屋だ。しかもそのお部屋は、お隣にエレベーターがあったから。周りのお部屋を気にすることが少なかったんだ。たっくんは生まれた頃、夜泣きがすごかったから、このお部屋の位置に救われたよ」「お母さんとお父さんのお気に入り、わかる？このドア。このグリーンが結構好きだったんだよ」

「覚えてない？この玄関。廊下の収納に、幼稚園のお便りとかしまってたんだよ。しまってたって言うか、溢れかえってたんだけどね」

「キッチンでさ、子供用のガードレール越しに、お母さんに呼びかけるんだよ。あー、あーって。このエイトパックなドアもさ、ガラスでしょ？だからさ、たっくん何度もぶつかっちゃってさ。」

「えー、ウサギのぴょんちゃん、覚えてないの？昔ね、家で飼ってたんだよ。ぴょんちゃん、ぴょんちゃんってね。そう、このマンションはペット飼育の相談が可能だったんだ」

「このお風呂にさ、たっくんと二人で入って。ほら、この写真。見てよ。洗面の壁が、昭和っぽいでしょ？だからさ、わざわざ写ルンです、っていうのを買ってきてさ。むかーしの写真みたいに撮ってみたんだよ」

「お父さんにとっては、このトイレが居心地が良かったからさ。いつもここで本を読んでたんだよ」

「あっちの方が、国立駅の方だったのかな。お母さんと喧嘩したり、たっくんのイヤイヤ期がすごかった頃はね、よくベランダに出てホタル眺めてたよ。え？ベランダからホタルが見えたのかって？それはあれだよ、あれ。」

「たっくんが生まれてから、この家を出るまでずっと、和室にお布団敷いてみんなで寝てたんだよ。」

「これは2024年の写真だから、そう、2月だね。関東に雪が降ったんだよ。雪が残ってるよね。ここでみんなで、小さな雪だるまを作ったの、覚えてる？」

「通りを挟んだ、目の前の学校。結局たっくんが通うことはなかったなあ。そうそう、バルコニーに出て、幼稚園の発表会の練習したよね。ピアニカ。一応、このマンションは楽器相談可能だったからね」

「どうして、国立に住んだのかって？それはね、お父さんもこの街で生まれたからだよ。すぐ近くに、コーポ・ルアってアパートがあってね。そこに住んでたんだよ。だから、国立って街に思い入れがあってね。また住みたいって思ってたんだ。ほら、みんなのコンビニ。面白いだろう？」

「いくらお父さんだって、駅まで徒歩18分だとこたえるよ。でもね、通りの建物とか、お店を眺めながら歩くのは楽しかったんだ」

「ごらん。有給休暇、って名前の本屋なんだ。もう、この名前がお父さんは好きで好きで。」

「ここはね、たっくんが生まれる前に、お母さんとふたりでよく行ってた台湾料理屋なんだ。」

「アポロでね、レコードを選んで。お母さんにプレゼントしてたんだよ」

「ほら、ブランコ通り。これでもう、駅前。家から駅まで結構歩くけど、思い出もいっぱい詰まっているんだよ」

ご興味をお持ちの方は、お問い合わせフォームからご連絡下さい。