【募集終了】誰も知らない

週末、ルーフバルコニーで虚ろに佇む私を誰も知らない。人気のない暗闇坂で、ゴロワーズを吸ったことがあるとかないとか歌っている私を、誰も知らない。それじゃ良くない気もするけれども、今はまだ良いのかもしれない。

曙橋駅。どこ？そこ。そんな風に言われる率高めの都営新宿線の駅のひとつ。市ヶ谷駅のお隣。自転車あれば、通勤でも通学でも、お遊びでも大体のエリアカバー出来てしまう駅なのに。誰も知らない。その駅の、北西に伸びる余丁町通り。緩やかな坂が続きます。

余丁町通りをのぼりきった先の路地を入ると、ひときわ渋い建物。建物外観は改修されていますが、今も残る外観タイルの釉薬の艶やかさ。大変に、レトログッド。

エレベーターはありません。募集の4階のお部屋までは階段で。玄関を開けると、玄関土間はレトロなカーペット。

間取りはワンルーム、中央にキッチン、奥に居室という格好で。写真はクリーニング前の状態です。キッチン前のスペースは狭さがありますので、あまりモノは置けなそうです。

奥へ進むと、所々に感じる和のテイスト。奥のこのスペース、広さはありませんが、天井の高さが約2.3mということで開放感はアリ。コンパクトなテーブルとベッドを置いて。時に食事、時にリラックス、という感じでしょうか。

ルーフバルコニーは広々としたスペース。前面にはビルが建っており、ガラス張りですので。平日の日中時間帯は視線が気になるかも知れません。でも、夜になれば、週末になれば。こんなバルコニーで、ひとりOne More Chance, One More Time.とか歌っている私を、誰も知らない。とはいえ、頭上には5階のお部屋のバルコニーありますので。あらやだ、聴いてたの？赤面、みたいな事もあるかも知れません。

水廻りはさすがの年代感。驚いたのは木製の天井。これ、お風呂の湯気とか、大丈夫かな、と思ったのですが。クリーニング前で写真の状態ですので、あまり気にしなくても良いのかも知れません。味、と割り切ってしまいましょうか。

本来筋、レトロヴィンテージで都心のど真ん中、ルーフバルコニー付きのお部屋です！みたいなご紹介の仕方が普通なのかも知れませんが。なかなか、そうもいかずで。ここからは、周辺の曙橋駅付近をご紹介。

曙橋駅周辺、市ヶ谷、四ツ谷と、坂とお墓の多いエリアなのですが。余丁町通りを駅方面に向かう途中の路地を入り。下り坂です。先に見えるのが、あけぼのばし通り。

この通りは、昔たしかフジテレビ通りとか呼ばれていた気が。河田町の高層マンションが建つ場所に、昔フジテレビあったんでしたでしょうか。フジのテレビマンたち闊歩してたんでしょうか。今は、よくある商店街風味ですが。通りの先の女子医大までの道は、韓国村と呼んでいいのかわからないですが、その手のお店が多かったのですが。最近はどんどん曙橋駅近くまで進出しているようですね。そして、福しん、ある街に悪い街はありません、って言おうと思ったら。そういえば、香源に変わってましたね。

商店街の途中、おナイスな床屋さんの脇を曲がると。ここは昔AISHO MIURAさんがあった気がしますが。今は別のギャラリーなんですかね。

高層のマンションには遊具とかもあったりして。運動不足だから、って言ってここで縄跳びする私を、誰も知らない。

ここも商店街の脇を入った先なのですが。住吉公園ですね。良いんですよ、ここ。公園脇の登り坂と併せて。土日にも関わらず、上司から鬼電が来て白目剥いて。ため息つきながら遠くを眺めるには、ちょうど良い塩梅の高台で。

駅前のコンビニも、金物屋のおばちゃんも。何も変わってないですね。などと思ってじんわりきている私を、誰も知らない。この路地裏の地下のお店はですね。それはもう大変に、形容のしがたい面白さがあってですね。

駅前の大通り、遠くに見える防衛省、その手前の橋が、曙橋だった気が。ヨレヨレのコートの襟立てて、愛だの恋だのしている若人横目に千鳥足な私を、誰も知らない。

この坂が新坂。先を進めば、もう荒木町ですね。

良く見ると、ここのFreshnessって、元は工場か何かだったんですかね。そういう内装なんですかね。どうなんでしょう。良いんですよ、ここのFreshness. 半地下に籠って作業できますし。2階にあがれば、広い窓にL字のテーブル。誰もいない2階、日曜の午前。コーヒーの香り打ち消すくらいの、酒の匂い漂わせて。怒りと焦りを抱える私を、誰も知らない。

気の合いそうな同年代は街にいないように思うし、素敵な文化的余剰など少なくて。なんでそんな街、曙橋に私(aeTe)が25~27歳の頃住んだのか。誰にも知られないし、誰のことも実は大して知りたくもないし。荒木町近いし、散歩するにはうってつけの起伏ある街並みだし。そして、何より、何よりと言いますか、実のところコレしか理由はないのですが。通勤電車乗りたくないし。そう、それだけだったんですよね。市ヶ谷勤務でしたから。当時。

そういうわけで。20代くらいの会社員の方。興味を持ってしまったら、お問い合わせフォームからご連絡下さい。