【募集終了】白檀カタルシス

路地のそこここから漂う、時が止まったかのような街の質感。歩くほどに感じる懐かしい情感。ふっ、と鼻をつく白檀の香りが呼び起こすのは、心の中にしまい込んだあの日の思い出でしょうか。あるいは、どうなんでしょう。

千駄木を出て。団子坂の上を目指して歩いて。路地裏の千駄木の街並み、蝉の泣き声に風鈴の音でも聞こえてしまったら。築年の古い日本家屋など残る路地ですから。心の内に埋め込まれた情感が湧き出しそうで。そして見える、借主を募集する建物。木造の2階建ですが、外壁には鋼材が使われていて、シャープな印象。

募集のお部屋は最上階の角部屋。南西向きの開口部は大きくて。眺望はなく、隣の建物が前面に見えますが、向かいの建物に窓がありませんので。人のめが気にならなそうな点はGoodかも知れません。床材は濃いブラウンのフローリング。キッチンと、シックスパネルの建具はホワイト。建具の取手はゴールドという事で。ほのかに香るエレガントさ。なお、本物件はロフトがついています。残念ながら、ロフトに繋がる階段は取り外しが不可。代わりと言ってはなんですが、やはり天井は高かったですね。

シックスパネルのホワイトのドアを開けた先には、洗面とお手洗い、そして浴室。この洗面、ちょっとグッと来ているのですが、皆様におかれましては、どうなんでしょう。浴室については、引き戸を開けて直浴槽、という対応です。

やれやれ、なかなかな水廻りだったですね。などと思って、居室に戻るとですね。何かが私を呼んでますね。窓ですか。天窓ですか。いえ、トップライトですか。同じ意味ですが。見上げれば、あらやだ、天井が高いこと。好き。

まったくもう。行きますよ、行けばいいんでしょ、ロフト。などと思ってですね。白の階段をのぼったのですが。この階段、造りがとてもしっかりしていて。安定感があるから、昇降運動が楽で。運動不足の私に、やさし。オヨヨ、ですね、ロフト。ロフトは天井の高さはなく、成人男性ですと中腰にならざるを得ないのですが、それにしても、ぽっかりとしたトップライト。差し込む光。目の端に映る千駄木の緑。悪くないかも知れません。

終始、貴婦人の話し声や、小さなお子様を連れた地域の方の存在が。あらまあ、今日も良い日を、などと思って通りを眺めていたらですね。すぐましたにですね、ドリップコーヒー、などと書かれたのぼりが。

お隣が喫茶店だったのですね。カフェと言った方が良いのかも知れません。寄席の案内など貼ってありました。いかにも千駄木らしい、という事でしょうか。

さて。千駄木へ戻る途中。ふっ、と鼻をつく白檀の香り。途端に、大阪は西田辺の商店街の思い出が蘇りましたね。千駄木。きっと、もう少し季節が巡れば。風鈴やらなにやら、記憶を呼び覚ます物事がそこここに溢れるでしょうから。このお部屋で、千駄木で暮らして。カタルシスの発露に身を委ねるのも良いのかも知れません。

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