【募集終了】いつかの豊饒迎えるまで

一瞬、なにを見ているのかわからない、戸惑い感200%の室内。どこぞのクラブ(銀座のアレです)かと思うような内装。6年だけの定期借家ですから、期間限定でこんな面白物件に住んでみるのも、アリかもしれません。

都営大江戸線の西新宿5丁目駅から住宅街に進むと見える、古びたビル。まさかこの後、驚愕の空間が待っているとは知る由も無く。築古のビル物件の階段をのぼって2階へ。やけに重厚な玄関を開けると、すわ、ゴージャスなクラブなのかここは、と思うような仕様で。木製のルーバー仕立ての3点折りたたみ式の扉。扉開ければ、トップのライトと合わせて、めくるめく窓。ふと、横目に見える、重厚過ぎるキャビネット。これはもう、コニャックが似合うとしか言いようが御座いません。なんですか、このお部屋は。

ちょっとした照明が照らす飾り棚とかですね、なんでしょうね、本当に丸源ビルしか思い浮かびません。あるいは、リッチなクルーザーの船内なのか。水回りもまた、ゴージャス。

どうなんでしょうね、このキッチンも。いくら6年限定の定期借家だからといって、この家賃で、このキッチン。引き戸開ければですよ。カウンター越しに、ダイニングに待たせた友人に、はい、水割り水抜きね〜、なんて遊び、できそうですよね。どうなんでしょうね。

そして、この和室ですか。どういう事なんでしょう。

和室の出現により、いや、これは逆に難しいぞ、などと思ったわけです。リビングダイニングは、実はそれほどの広さがありません。お一人で暮らすにしても、和室が結構に広いものですから、リビングダイニングと、広い和室をどのように使うのか、思案のしどころです。でもですね、ここまで散々室内の面白さ、と言いますか、ダンディーさにワーキャー言ってきたわけですが。ご紹介しようと思った理由は、この室内にはあらず。物件の立地なんですよね。渋谷区本町。最寄りは西新宿5丁目ですよ。この賃料ですよ。個人的には、20代から30代の方に、住んでもらったら面白いのではと思っているのです。だってですよ。新宿三丁目で朝まで飲み明かしても、フラフラの自転車乗りだったとしても、ヒョヒョイと帰れますよ(飲酒運転、ダメ!、ゼッタイ!)。休みの日なんて、初台のICCですとか、新国立劇場が、すぐ近くですからね。素敵な立地な訳です。そして、きっとそんな生活、ずっとは続かないですよね。ある方は配偶者を得て。ある方は、東京を離れて。暮らし向きはいつか変わるでしょう。そこにきての、6年間の定期借家。2年じゃ暮らしは変わらないかもしれない。4年だと、どうだろう、微妙なところで。8年だと、そもそも、ひとところに住み続けるにはちょっと飽きるよね。そう、6年。なかなか絶妙な期間設定。この6年の間に駆け抜ける都心暮らし。そして、やがて迎える人生の転機。都心の生活を通して、酸いも甘いも経験して。いよいよ迎える人生の新たなステージは、きっと実り豊かなものとなるのでしょう(往々にして、その時、その当人は、そんなことに気づかないものですが)。そんな日を迎えるまで、この、樽の中と言っては言い過ぎかもしれないこのお部屋で過ごしながら、あるいはワインのように、少しずつ熟成されていってしまえば良いのではないでしょうか。いつか迎える豊穣のその時まで。

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