あゝ慕情

東京のどこかしらのエリアに引越しをお考えの方がいるとして。具体的にこのエリア、という希望がないのなら。市谷柳町、という手もあるかもしれません。より具体的に申し上げますと、牛込柳町だとか、若松河田だとか、曙橋といった駅付近が良いのでは、と思う今日この頃です。なぜか。良い街だと思うからです。なぜか。私が住んでいたからです。(それだけ？)なにが良いのか。慕情溢れる街なのです。より正確に申し上げますと、荒木町とか、神楽坂とか、そういったエリアに近くって、そのエリア感が染み出した街々なのです。

暮色にじむ頃合い、街は静かに気色ばむようで。夜の帳が降りる頃には、じっとりと暗い路地の隙間から様々な人生模様がしみだしては、さっと消えていく。それは新宿とも銀座とも異なる、じっとりという言葉がとても似合う雰囲気なのです。こうした雰囲気は30代になって初めて触れるとアレですので、出来れば20代の頃に一度触れて頂くのが宜しいんじゃないでしょうか。渋谷新宿は、学生時代にひとしきり巡りましたよね。といって、六本木・麻布界隈に住んでも、なんだか生活が予見できそうじゃないですか。となると、ここはやはり市谷某のエリアじゃないでしょうか。

そんな事を思っていたら、市谷柳町にコンパクトなコンクリ打ちっぱなしのメゾネット物件がありましたのでご紹介を。最寄りは都営大江戸線牛込柳町。大通りをひとつ裏手に入れば、お寺あり、石階段あり、井戸があり、と風情を感じる佇まい。木造建築もちらほら見かける一角に、募集のお部屋があるコンクリートの建屋が見えてきます。接道からお部屋の入り口までのアプローチが迫るものがあります。アプローチって大事ですよね。募集のお部屋は1階のひと部屋。鍵を開ければ、そこはコンクリ土間にキッチン。玄関開けたら即生活、です。玄関扉横に一枚大きなガラス窓が嵌め込まれてますので、採光はGood。けれど、コンクリ土間にミニテーブル置いてゆっくり食事、という感じにはならなそうな気が。これは、朝食は立食かスツールスタイルが推奨かもしれません。夜は2階に食事運ぶスタイルでしょうか。

では2階はどうなのか、という事で階段を登って上階に上がります。ちなみにコンクリ打ちっぱなし仕様ですから、採光窓から入る光を受けた階段はやはりいい感じ。2階も至ってシンプル。大きな窓が気持ち良いです。アプローチを眺めながらの寛ぎの時間はアリですね。若干、他のお部屋の方と視線が交差しそうですが。

そういえば、トイレ洗面所は使い勝手の良さそうな仕様で、特にコメントはないのですが、気になったのはお風呂です。小窓がついているので、光が差し込みます。これ、嬉しいですね。広くはないですが、休日のお風呂時間はなかなか心地良さそう。

どうなんでしょう。やはりメゾネットだけあって、1階と2階の空間がきちんと分けられるのが良いですよね。2階は完全にプライベートの空間に。1階は狭いですけど、スツールにミニテーブルを臨時で設置して、客人を呼んだカジュアルな会なんかしたら雰囲気的には面白そうですけど。

さて、最後にまたエリアの話をして紹介を終わりにしたいと思います。市谷柳町ですが、例えば新宿2丁目3丁目あたりからなら、歩いて帰れます。神楽坂なんかですと、散歩くらいのノリで戻って来れますね。もちろん、荒木町からも。

世の慕情をたっぷり吸って、じっとりとした夜道を歩きながら。曙橋の真ん中なんかでこう呟くと、なかなか味わいがありますよ。"愛することは、ほとんど信じることである"、と。

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